<南風>子どもの健康を守って


社会
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 今年で本土復帰51年目だが、復帰とともに日本国の母子保健法などの法律が適用され、医療保健関係者は、対応に追われた。ドルから円に変わったように母子保健体制も激変した。子どもの福祉保健政策が、本土より大幅に遅れている中、子どもたちの健康を守るため、小児科医の有志が立ち上がり、復帰翌年に沖縄県小児保健協会を創設し今年で50周年を迎える。

 宮古・八重山を含む全県の子どもたちの健康を守るため健診事業の中心となり、小児科医による乳幼児健診を実施した。特に宮古・八重山では、厚労省の派遣医制度を利用して、本土から多くの小児科医の先生が駆けつけてくれた。今では、県内の小児科医で実施して、出生者数名の離島でも、本島と同じ質の高い健診が受けられる。SDGsの「誰一人取り残さない」精神が、そのころより県内には既に根付いていた。

 これまでの50年を振り返ると、いろいろな子どもの健康を守る取り組みが行われた。未熟児出生率が全国一高いため原因究明の聞き取り調査を行い、妊婦自身の自己管理の意識が十分でないと未熟児の出生が多くなることを突き止め、全国に先駆け市町村担当者による母子健康手帳交付時の妊婦の保健指導を徹底した。また県内で麻疹(はしか)で多数の子どもの命が奪われると、麻疹撲滅を目指し、市町村、保健所、医療機関、保育所、教育機関などの代表者を集め「麻疹0プロジェクトチーム」を立ち上げ、県内発生数をゼロにし、麻疹の全数把握の法律改正のモデルにもなった。

 復帰後の厳しい本県の状況の中、沖縄県が全国のモデルとなる保健事業が多いことは、県民にはあまり知られていない。これからは、保健医療関係者の努力だけではなく、県民に理解してもらい、健康で子どもたちが輝く未来の物語を一緒に作っていきましょう。

(宮城雅也、県小児保健協会会長)