<南風>ブルーシール


社会
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白木 敦士(琉球大大学院准教授)

 「ブルーシール」のアイスクリームを一層恋しく感じる季節である。定番「塩ちんすこう」味や、最近覚えた「琉球紅茶わらび餅」味もたまらない。夏休みのアルバイトであろうか。高校生と思われる店員を見かける。覚えたての笑顔で接客してくれ、ほほ笑ましい。

 私は2020年から21年まで、留学のためハワイ州ホノルルで過ごした。友人や家族からは、青い海や深緑の森を満喫していると思われ、うらやましがられた。しかし実際は、上達しない英語力を嘆きながら、日々法律書と向き合う日々であり、モノクロの世界を過ごしていた。節約のため車は持たず、バスも使わなかった。自宅から大学までの片道8キロの移動は、自転車で乗り切った。

 ホノルルで最も印象に残っている風景は、通学路沿いにある小さなアイスクリーム屋であった。「バスキン・ロビンス」と呼ばれるチェーン店である。日本では「サーティーワン」として知られる。今から46年前、店舗裏手の古びたアパートに住んでいた高校生が、夏休みにこの店でアルイバイトを始めた。「岩のように固いアイスクリームをすくうことは、手首に負担がかかる大変な作業であった」という。その高校生は、その32年後に第44代アメリカ大統領に就任する。バラク・オバマ氏である。

 大統領になること自体を素晴らしいというのではない。またオバマ氏の政治的評価を称賛したい訳でも、アメリカ社会が日本よりも優れていると言いたい訳でもない。しかし、私には、このアイスクリーム屋が、夢を持った子どもがなりたいものに挑戦でき、実現できる社会がある、そんな象徴に思えてならなかった。

 「ブルーシール」のアイスをほお張りながら、精いっぱい働く彼らや彼女らが、いつの日か、夢をかなえて羽ばたかれることを願う盛夏である。

(白木敦士、琉球大大学院准教授)