<南風>経営理念の浸透


社会
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 クライアント企業との定例MTG(ミーティング)では毎回ミニコーチングが行われる。参加する社長や人事担当者が考える、会社のありたい姿を引き出し、現状とのギャップから行動を決定・実行・振り返りをし、目標達成を目指す。

 半年前にクライアント企業との定例MTGで経営者から「働いているみんなが経営理念に共感し、うちの経営理念は~です」と家族やお客さまに胸を張って言えるようになってほしい、と語ってくれた。この目標をどう実現したいか深掘りすると「自分が新たに決めるのではなくメンバー全員で決めたい」と強い思いが返ってきた。こんな思いを聞いてしまったら協働関係を大事にする弊社は到底黙ってはいられない。

 ではどうするか。通常、経営理念は創業者や現経営者で決めることが9割を占め、社員全員を巻き込んだ例は全国的に見てもレアだ。手探りの中、さまざまな方の協力を得てワークショップを構築し3カ月のプロジェクトを発足。11人のメンバーを中心に組織でアイデアを出し合いワークショップを経て7月には社長とメンバー全員で作り上げた経営理念が誕生した。

 まずはここに関わった全ての方々に拍手を送り、この偉業をたたえたい。特にプロジェクトメンバーは、この先10年、20年と続く経営理念を策定するプレッシャーも少なからずあったと思うが、対話を重ねるごとにぐんぐん成長し驚くほど視野や視座が磨かれた。人材育成の視点で見ても実に面白い取り組みだ。

 東京商工リサーチが実施した「中小企業の経営理念に関するアンケート」によると経営理念に共感し行動している企業は47%で、効果として意欲向上、社員の自律性、エンゲージメントの向上が挙げられる。経営理念への共感、浸透は企業の課題解決に直結するアクションなのかもしれない。

(福島知加、ワダチラボ代表取締役)