<南風>インタビューという仕事


社会
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 アナウンサーの仕事の一つにインタビューがある。政治家、タレント、経営者、研究者。実に多種多様な方にお話を伺う機会があるが、いつだって先入観を覆されて面白い。もちろん先入観を持たずに取材に当たろうと思ってはいるが、事前に取材対象のことを調べると、どうしても、この人はこんな人かな。この仕事はこんな感じだろうというイメージができあがってしまう。だが一度面と向かって話を聞くと、それらはがらりと変わる。

 メディアを通して過去の言動を知っている方に会うと、予想に反して驚くほど朗らかだったり物静かだったり人当たりが良かったりする。

 質問に素早く返す方もいれば、じっくりと言葉を選んで話す方、少ない言葉で端的に答える方、長々と思いを述べる方など人それぞれの反応が面白い。話しているうちに、だんだんと取材対象者の人となりが分かってくるのは、この仕事の面白さを感じる瞬間でもある。

 人となりとは違う部分でいえば、お酒をあまりたしなまない酒造メーカーの社長もいれば、蜂に刺されるのが日常という養蜂家など、その職業に対する思い込みを覆してくれるような興味深い話も聞くことができる。自分の中に勝手に築かれていた取材対象者の仕事への姿勢や常識が覆っていくのも、わくわくする。大きなことをいえば、世界観が変わる。それで大丈夫なんだという世の中の懐の深さを感じる。

 インタビューで知らない人と話すことは緊張もするがとても刺激的な体験だ。いろいろな人がいて、いろいろな考え方があって、人間の多様性を目の当たりにできる。話を聞く中で時には自身を振り返り反省することもある。人間の面白さだけではなく、自分の世界の広がりも感じることがこの仕事の最大の魅力だ。

(小橋川響、ラジオ沖縄アナウンサー)