<南風>異次元の子育て支援を


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 沖縄県の子どもの貧困率は約30%と全国一高い。貧困で最も怖いのは、子どもの心と体に障害を残し、時には虐待死を引き起こすことだ。貧困と病気は同じ性質を持ち、かかると苦しい上、治療に費用も時間もかかる。目前の貧困の子どもを救うことも重要だが、同時に病気と同じように貧困そのものの発生を予防することが、貧困撲滅となり子どもの健全育成を守る。

 子どもの貧困・虐待予防には出生前からの育児環境を把握し、必要なら早期に支援できる育児支援システムの構築が必須だ。例えば北欧フィンランドでは、子ども一人一人に担当保健師を置き、妊娠期から就学前まで定期的に介入し社会資源を活用して切れ目なく支援する「ネウボラ」というシステムがあり、子どもの虐待が激減した。わが国では育児環境改善のため「子育て世代包括支援センター」(以後センター)設置を市町村に努力義務化した。

 設置前にセンターのあり方を県主催で市町村や小児保健協会および関係機関で検討した。センターは施設ではなく連携システムが重要で、「ゆいまーる」精神に基づき、住民自らが全ての妊婦と子どもを見守り、そして育児支援の必要な家庭はセンターにつなげる。

 各市町村では親子手帳の交付時指導、妊婦健診、全戸訪問、乳幼児健診などのその時々で情報をつなぎ、全家庭の育児状況を把握し、センターが社会資源を活用した早期支援する革新的なシステムで「沖縄版ネウボラ」が見えてくる。

 少子化社会では、子どもが輝く未来にするため、誰一人取り残さない子ども一人一人の能力を最大限に伸ばすことが必要となる。子どもの生きて活きる能力を養うのは、出生前・乳幼児期の介入の効果が高い。各市町村のセンターでは、関係する人・心・地域がつながる育児支援イノベーションを実現してほしい。

(宮城雅也、県小児保健協会会長)