<南風>命を守る男性育休


社会
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福島知加

 世界で最も長く育休を取得できる日本。昨年10月に男性育休の新たな施策である「産後パパ育休」制度が導入され、給付金も半年間は賃金の67%が支給されるが今後は最大80%まで支給額を引き上げる施策が検討されている。なぜ、ここまでするのか。少子化対策という大きな要因はあるが、実はそれだけではない。

 厚生労働省の調査によると、妊産婦の死因の1位は「自殺」で多くの専門家が原因に「産後うつ」があると指摘する。産後はホルモンバランスが急激に変化するだけでなく、2時間に1回やってくる授乳により睡眠時間の確保も難しい。その結果、10人に1人の割合で産後うつは発症すると言われ初産婦に至っては産後2週間時点で産後うつの数値が25%まで向上する。

 だからこそ、夫の育休を通して妻が1人で抱え込まないよう感情を共有し共に子育ての壁を乗り越えていくことが重要だと考える。

 私の話をさせていただくと、3年間の不妊治療を経てようやく授かったわが子を私は1カ月ほど思いっきり抱きしめることができなかった。出産後、病名不明のじんましんが全身を覆い、息子に触れることで「この子に何かあったら」という感情や「こんな時に病気になるなんて駄目な母親だ」とマイナスな感情が渦巻き、抱きしめることをちゅうちょするようになったからからだ。そんな時に夫が育休を取得し、交代でミルクをあげてくれたり抱っこやオムツ替えも率先してくれたりしたことで私の睡眠時間が確保でき、1人で抱え込むことも行き過ぎた捉え方もなくなった。

 あの時、育休を取得すると判断し、共に乗り越えてくれた夫を尊敬しているし同時にそういう家庭が1組でも増えることを心から願っている。まずは男性の育休がママと赤ちゃんの命を守る施策であることを知っていただきたい。

(福島知加、ワダチラボ代表取締役)