<南風>夢をかなえる


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 先日、琉球新報社のこども記者さんが弊社を訪ねてくれた。アナウンサーになりたいという彼女の瞳は輝いていて、私も元気をもらえた。「どうやって夢をかなえたのですか」。質問に、これまでお世話になった方の笑顔が浮かんだ。私が今の仕事に就けたのは、周囲の支えのおかげだ。

 家族や友人の温かい励ましのおかげで頑張れたし、親身になって相談に乗ってくれる先輩の優しさで、壁を乗り越えることができた。一方で、ほろ苦いけれど、私を成長させてくれた過去がある。あれは、就職活動で東京のアナウンス事務所を受験した時のこと。お世話になっている先輩の紹介で、事務所関係者が面接をしてくれた。
 季節は冬が始まる頃で、上京した私はとにかく寒さをしのごうと、コート2枚重ねで面接場所の恵比寿駅構内の喫茶店に向かった。担当者2人が待っていて、会った瞬間、緊張で上気した。アナウンサーになりたいという思いを熱弁した後で、一人の面接官がこう切り出した。「その着こなし、変だよね」。コート2枚重ねのことだ。野暮丸出しの私は返す言葉もない。その後、ストレートなダメだしが続いた。辛口だけど、的を射た内容だった。
 面接の後、引きつった笑顔で喫茶店を後にし、ホテルで泣いた。自分のふがいなさと至らなさと悔しさで涙が止まらなかった。
 でも、良薬は口に苦し。この出来事をきっかけに、私は指摘された弱点を直し、夢をかなえようと奮闘した。
 人が夢や憧れを抱くのは、将来そうなる予定があるからと聞いたことがある。就職活動で思うような結果が出なくて不安で押しつぶされそうな読者もいるかもしれないが、どうか諦めずに進んでほしい。
 「大丈夫、きっと乗り越えられるよ」。未来のあなたが、そう言っている。
(金城奈々絵、ラジオ沖縄アナウンサー)