<南風>折り合いをつける対話力


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 コミュニケーション能力とは、「人との関わりの中で経験を通して身につけるものだ」とか「相手を思いやる気持ちがあれば、コミュニケーションはうまくいく」という意見がある。確かに、人と人の間で培われるものではあるが、思いや経験だけで能力が向上するものだろうか。

 日本経団連は、新卒採用に当たる企業が最も重視する能力を調査している。第1位は12年連続で「コミュニケーション能力」だ。年々ポイントも上がり、今年は85・6%だった。この結果は、思いや経験で身につくと考えられているコミュニケーション能力と、企業が求めているコミュニケーション能力は違うということを表しているように思う。
 コミュニケーション能力を高めるには、人に対する思いやりや心構えを土台とし、その上で必要なスキルをトレーニングによって向上させていくことが有効だ。企業が求めているであろう基本的なコミュニケーション能力は三つあるが、紙面の都合上、その中の一つの「折り合いをつける対話力」に焦点を当てたい。
 「折り合いをつける対話力」とは、異なる文化、異なる価値観を持つ人の意見にも耳を傾け、納得するまで話し合い、協力して仕事ができる力である。
 決して、場の空気を読み、自分の意見を封じ込め、物事をかど立てずに行おうとすることではないことに注意したい。この能力を身につけるには、まず、運転技術やスポーツを学ぶようにうまく行動するための理論を学ぶことだ。そして、実際の場面を想定してさまざまな役割を演じ、問題を解決する練習を行う。何度もシミュレーションを行うことで、実際の場面で冷静に対処できるようになる。
 コミュニケーション能力は漠然と捉えると改善しないが、適切なトレーニングを重ねることで誰でも向上できるのだ。
(吉田文子、シニアコミュニケーションカウンセラー)