<南風>「つらい」と「面白い」は紙一重


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 小学生だった私には苦手なものが二つありました。血液検査と慰霊の日です。この二つを平気でこなしている同級生はまさに超人で、羨(うらや)ましく思っていました。

 一つ目の血液検査ですが、血を見ると気を失うため、毎年の検査では飽きもせずに気絶し、その日の話題をかっさらっていました。驚くべきことにこの習性は他人の出血を見ても倒れる、さらには血を見なくても想像して倒れる、という変態的なレベルまで昇華し、今では履歴書の特技の欄に記載できます。われながらすごい技能。
 もう一つは慰霊の日。その日が近づくと学校は何とも言えない暗くじめっとした空気に包まれます。梅雨と同時期だからなのですが、これが慰霊の日の印象と相まって、素晴らしく怖い。
 図書館には人が死んでいる白黒の写真がずらっと並べられています。もう怖い以外の何者でもなく、「はだしのゲン」の鑑賞会でも体育館から抜け出す始末で、とにかく戦争と名のつくものから逃げ続けてきました。
 しかし年配者から人生体験を聞き取る、という仕事をしたがために、開き直って沖縄戦のことを学ぶ必要にかられました。
 すると、あれだけ避けてきたのがうそのように、今では戦争体験を知りたい派になっています。われながら凄(すご)い転身ぶり。
 さて、ある女子中学生に会いました。学校が苦手だといいます。特に教室にいるのが嫌らしいのです。
 素晴らしい感性です。絶対に教室に入らないと決めてもいいですし、開き直って教室で何が嫌なのか分析してもいい。
 いずれにしても彼女には自分の感性を愛してほしいと思います。きっと人生を面白くするために与えられていますから。開き直って教師になったりしてね。
(宜寿次政江、HIV人権ネットワーク沖縄副理事長)