<南風>与那原大綱曳の力(3) 440年の伝統に感謝


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 大正区の2大イベントは「エイサー祭り」と「大正区民まつり」、毎年何万人と人が集まります。以前は、エイサー祭りには沖縄出身でない区民はほとんど参加せず、逆に区民まつりには沖縄出身の区民はあまり足を運ばない状態でした。

 沖縄本土復帰40周年と大正区制80周年の記念特別事業として大正区で行う与那原大綱曳。大正区民が皆で力を合わせて大綱を曳かねば、意味がないと思いました。そのため、沖縄出身の方々、区内地域団体の実働メンバー、大正区役所職員と、区を挙げて準備と運営を行う形にしました。何度も会合を重ね議論が続き、不安も募りました。
 2012年9月8日の当日。与那原町から古堅町長、仲里議長、石川与那原大綱曳実行委員長はじめ200人もの方々がお越しくださり、与那原町で行われる大綱曳がほぼそのまま大正区で再現されました。メーモーイ。金鼓隊。旗頭のガーエー。支度を乗せた大綱が会場に入ると荘厳さに感嘆の声が満ちます。綱曳が始まると子供から年配の方まで会場の皆が力を合わせて曳き、興奮は最高潮に達しました。
 移住開始から100年余り。その間、沖縄出身の区民と移住以前から大正区に住んでいた区民が一体となって夢中になれた行事はありませんでした。100年の軋轢(あつれき)を440年の与那原伝統文化の力が吹き飛ばしたのです。5万人が集う中、笑顔で称(たた)え合う会場の皆の姿に涙がこみ上げました。
 今、大正区民まつりの最後を飾るメーンの行事は、与那原町からいただいた綱による子供大綱曳です。区内の子供たち皆が参加し、沖縄出身の方もそうでない方も一緒に声援を送ります。
 与那原大綱曳440年の迫力と感動。それが大正区を一つにしました。心からの感謝を込めて、友好交流を重ねたいと思います。
(筋原章博、大阪市大正区長)