<南風>沖縄モズク 中国人観光客にPRを


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 2016年の県産モズクの生産量は約1万4700トン、目標より4千トン以上少ないとの報道があった。要因は天候のようだ。年々、モズクの需要が高まっている中、関係者はさぞ残念であろう。一方で朗報もある。県内研究機関から、モズクのゲノム(全遺伝情報)解読に成功したとの発表があった。この研究で環境変化に強い品種改良が進むとの期待がある。

 モズクの安定生産は長年の課題だが、過去には生産量が多すぎて、相場が大きく崩れたこともあった。業界は打開策の一つとして、香港、台湾などアジア市場の開拓をしているが、定着には至っていない。新しい食材の普及には時間がかかる。より多くの人に試食をさせ、その良さをアピールしたいが、海外での販促には限界がある。

 そこで一案だが、来沖する中国人観光客を対象にPR活動をしたらどうか。台湾、中国、香港からの観光客は昨年100万人を超えた。実は、彼らに人気の観光ルートに各地の「お魚センター」がある。団体で訪れ、マグロ解体ショーや海鮮料理を楽しむ。その機会に、モズク料理を試食させたらどうか。さらに、宿泊するホテルやクルーズ船の食事メニューにモズクが入ればより効果的。多くの人が味を覚えることで、食材としての知名度が上がっていく。

 以前、県工連は県、県漁連との共催で、福建省福州市で調理師147人が参加する「モズク料理コンテスト」を開催した。驚くほど多くのアイデア料理が出されて、福州市民にも大いに受けた。その時、モズクは十分に中国料理の食材になり得ると確信した。

 沖縄のモズクの生産量は全国の90%を占める。需要が増えれば、産地の意見も強まる。私は、今の数倍の生産量でも需要に追いつかない日がいずれ来ると本気で考えている。
(桑江修、沖縄県工業連合会専務理事)