<南風>気をつけたい「あがり症」


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 今回は、「あがり」について書こうと思う。

 「あがり」は、人前でスピーチをする場面で、心臓がドキドキしたり、しどろもどろになったりする時に感じる不安感、恐怖心だ。「あがり」が起きるのは人前でスピーチをする場面だけではない。苦手な人との雑談、慣れない高級レストランでの食事などでも起きる。

 「笑われないだろうか」「そのくらいもできないのかと思われたら、どうしよう」「こんな格好で恥ずかしくないかな」と、人にどう見られるかを気にして不安になれば、それは「あがり」である。

 「あがり」は「本能」である。人間なら誰でも持っている。自尊心を守ろうとする脳による防衛反応なのだ。「あがり」とうまく付き合うにはコツがいる。「あがり」をコントロールする技術を身に付けることだ。

 例えば、食欲や睡眠欲といった本能をコントロールしないとどうなるだろうか。食べたいものだけを食べたり、眠りたい時に眠ったりするのであれば、社会生活に支障が出るのは言うまでもないだろう。「あがり」もコントロールしなければ、過剰な防衛反応となり、混乱した状態となる。

 苦手な場面では、息が苦しくなったり、声や手足が震えたりという身体の変化を感じやすい。身体の変化を感じて、「まずい!どうしよう」と思えば、ますます不安感情が増す。この状態を長年繰り返していくと、苦手な場面ではあがるというイメージが出来上がり、条件反射的にあがるようになる。これが「あがり症」だ。

 あがり症になりやすいのは、向上心が高く真面目な人だ。「ちゃんと話さなくてはならない」とか「人に迷惑を掛けないようにするべきだ」など、◯◯でなくてはならない、◯◯であるべきだ―といった言葉を多用している。この思考は「あがり」を強くするので気をつけたい。
(吉田文子、コミュニケーションカウンセラー)