<南風>「だからさぁ」に誘われて


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 「だからさぁ」

 どこからか懐かしい会話が聞こえてきた。間違いない。ウチナーンチュだ。

 2011年、ハワイで働き始めて2カ月がたった頃、会社のビル1階の公共広場でランチタイムを取っていた。毎日、英語だけが飛び交う環境に、少し疲れも覚えていた。そんな時だった。

 ビジネスマンに交じってて、4人組の小柄なおばちゃんたちが、お菓子を広げて、話に花を咲かせていた。

 「すみません」私は声を掛けた。「沖縄の方ですか?」「あい、あんた誰ねぇ」

 私は、自己紹介をし、最近からこのビルで働き始めたことを話した。

 話を聞くと、4人は全員ウチナーンチュ1世の方で、ハワイへ移住し40年近くたつという。最近では、このスポットでゆんたくするのが日課なのだそうだ。

 「お会いできてうれしいです」

 しばらくして仕事に戻る時、袋にお菓子をたくさん詰めて持たせてくれた。

 それからというもの、仕事、県人会、友人を通して、たくさんのウチナーンチュに出会った。4月にヨーロッパ旅行へ行った際には、フランス県人会、ロンドン県人会の方にも会うことができた。ウチナーンチュの絆は特別だ。

 初対面にもかかわらず、沖縄出身というだけで生まれる親近感。沖縄のどこ出身?に始まり、終わることのない会話。イチャリバチョーデーの意味を、あらためて気付かされた。

 14年にハワイへ移住した私は、両親を連れて、3年前に働いていた思い出の場所を案内していた。

 「だからさぁ」

 まさかと思いながら目をやると、3年前と同じスポットで、4人はゆんたくしていた。

 「お元気でしたか」と声を掛けると、今度は私の両親と、沖縄の話題で話が止まらなくなった。
(比嘉具志堅華絵 ハワイ沖縄連合会会員、『SHINKA』副会長、1級建築士)