<南風>時代が息づく音の力


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 誰にでも大切な青春の一ページがあると思う。私のページは音楽なしでは語れない。

 中学時代は吹奏楽部、高校時代は合唱部と音楽漬け。音楽が好きになったきっかけは5歳の頃から習い始めたピアノだ。お稽古に通い始めた頃はピアノがわが家にやってくる前で、勉強机に模造紙で作った鍵盤を置いて右手と左手の動きを練習していた。

 楽譜を見て弾くよりも、コマーシャルソングやアニメソングなど聞いた音を再現するほうが好きで、ちゃんと譜面を追わない不真面目な生徒だったけど、ピアノ教室で過ごす時間は満たされて、奏でる音色に癒やされた。

 ラジオ局に入局した今も音に包まれて過ごす日々を送っている。トークの合間に紹介するアーティストの曲はもちろん、取材先でのインタビュー、パーソナリティーの笑い声など私の生活は音であふれていて、この仕事に就けたことを幸せに思う。

 特に音の力を実感するのは、過去の音源を聞いている時だ。弊社は1960年に開局し、それ以来、沖縄の歴史を収録してきた。島ぐるみ闘争やコザ反米騒動、沖縄本土復帰など当時の音声を聞き返すと時代の動きをリアルに感じることができる。とりわけ、街頭インタビューなどで拾い集められた人々の声は印象深い。

 終戦後から沖縄の人々が強いられてきた基地負担について考えさせられる。また、久高島のイザイホーなど祭祀に関する音も残されていて、暮らしの息遣いが聞こえてくるようだ。

 そうしたアーカイブス音源をメインにした、新コーナー「音旅~オキナワンヒストリー」を来月4日から担当番組「Island Today!」内で放送する。毎週火曜日の午後4時半からおよそ5分間、ラジオに耳を傾けて、タイムスリップしていただきたい。
(金城奈々絵、ラジオ沖縄アナウンサー)