<南風>まねる戦略


社会
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 「あなたは急性難聴ですね。ちゃんと寝てますか? 危ないですよ。少し休憩を取ってください」

 2010年5月、私は1級建築士試験に挑んでいた。想像はしていたものの、実際に勉強を始めてみると、その過酷さに押しつぶされそうになっていた。毎日、大量の参考書をがむしゃらにこなす中、ノイローゼ気味になってしまい、夜も眠れず、とうとう私の耳は聞こえなくなっていた。

 病院の帰り、気晴らしに寄ったデパート。試験と関係のない世の中は、とてもにぎやかだった。

 ある日、いつものカフェで勉強に励んでいた。休憩がてらに店内にあった一冊の本を手に取り、パラパラとページをめくっていると、あるフレーズが目に止まった。「時間がないから成果が上がらないのではありません。時間があるから成果が上がらないのです」

 本田直之さん著書の『レバレッジ・シンキング』。

 これまで、時間がないと焦っていた私は、衝撃を受けた。時間がないからこそ、成果を上げることができるという、逆転の発想をもらった。

 この本をきっかけに、これまでの勉強法・時間管理を徹底的に見直した。そして、ある決断をした。

 「短期で合格した先輩をまねること」

 彼らは、限られた時間の中、最短最速の勉強法を実際に実践し、すでに結果を出してくれているので、彼らをまねることが、一番の近道だと確信したのだ。

 この決断が転機となり、その後、勉強スピードは20倍アップし、それに伴って理解度、記憶力がどんどんついてくる感覚があった。そして、合格した。

 人はどうしても自分の力だけで頑張ろうとしてしまう。しかし、そのがむしゃらな手を一度止め、自分より一歩先に結果を出してくれた先輩を、素直にまねるのも、戦略の一つだと学んだ。
(比嘉具志堅華絵 ハワイ沖縄連合会会員、『SHINKA』副会長、1級建築士)