<南風>ウクライナの今


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 10月20日のウクライナは最高気温6度、最低気温マイナス2度、そろそろ秋も終わりを迎えます。これから長い冬の始まりです。

 ウクライナの首都キエフでは、気温が8度を下回ると暖房が入るそうです。暖房と言っても市が管理する熱源供給システムにより、市内の各家庭や公共施設に熱い蒸気が送られ、部屋全体を暖めるようになっていますが、現実は異なります。現在はロシアと事実上の戦闘状態にあるため、ロシアからの天然ガス輸入はどんどん減っています。逆に欧州連合(EU)からの輸入は増える一方です。

 しかし、戦闘状態が長引くことによる経済的疲弊により、時々、前触れもなく供給が止まります。今晩も停電ならぬ停暖です。外は0度前後。部屋の中でもダウンを着ています。終わりが見えない戦闘のため、街の中でも軍服や迷彩色の戦闘服を着ている人々を見かけます。

 昨日、国立キエフ工科大学で特別講義を行いましたが、迷彩色の防寒着を着ている学生が教室の1割以上を占めています。聞くところによると、徴兵を免除される代わりに軍事科目を受けなくてはならないそうです。こうしてウクライナを代表する優秀な若者たちもそのうち戦争に駆り出されるのです。

 一方、街の中心には信じられない高級車が並んでいます。オルガルヒと呼ばれるソ連崩壊のどさくさで巨万の富を築き、政治との癒着によりさらなる富を稼ぎ出した富裕層の車です。自身が政治家に転身したオルガルヒも数多くいます。政治家や役人までもが彼らと癒着しています。

 ウクライナが建国してから25年がたちました。その間、オレンジ革命、ウクライナ騒乱と2度の革命を起こしたウクライナ人ですが、本当の民主主義を手に入れるためには、まだまだ時間がかかりそうです。
(木村真三、放射線衛生学者)