<南風>ご先祖様の声を聴く方法


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 「うちのお年寄りたちに字の歴史とか、分かりやすく話してくれないね」と兼次の大城みーこ区長にお願いされましたので、「はいよ」と引き受けました。おじいちゃん、おばあちゃんにどんな内容なら楽しんで聞いてもらえるかなと考え、「シマの地名なら分かりやすいかも」と資料を作り、講座を開きました。

 兼次の集落や公民館、神ハサギなどのある場所は、「屋敷原(やしきばる)」と呼ばれます。素直な地名ですね。仲尾次や平敷では「当原(あたいばる)」と言い、ムラの中心地です。

 「古島原(ふるじまばる)」は兼次のご先祖さまが住んでいた場所。シマの南側の高台にあり、土器や青磁が出土する遺跡です。御嶽(うたき)もあります。屋敷原に移動した兼次人が、元いた場所を「古島」と命名しました。「古くてボロ」ではなく、ムラの発祥地の意味ですよ。玉城にも同じ小字がありますね。

 ところで兼次には海岸がありません。兼次の浜は隣の今泊と諸志の地番です。言い伝えによると、昔、土地が多いと納税も多くなったので、畑に向かない海岸は手放したのだそうです。兼次(はにし)ンチュは経済感覚がしっかりしてたのかな。釣り好きも多いけどな。

 2時間ほどで講座は終了。数人のおばあちゃんたちが盛り上がり過ぎて、講師そっちのけでおしゃべりが止まらないという、ちょっと困るけれど、うれしい場面もありました。

 往古の人々が土地の特徴をどう捉え、どう名付ければお互いに「あの場所」と認識できる土地になるか、昔人(むかしんちゅ)のセンスが伺えるのが地名の楽しさ。「この場所にご先祖さまはこんな意味を持たせたんだ」と知ることは、今の私につながって、自信を持ってその地に立つことができる気がします。

 兼次の地名の「声」は、にぎやかな子孫に聴いてもらって、すごく幸せだったでしょうね!
(石野裕子、今帰仁村歴史文化センター館長)