<南風>心に響く声で支え合う


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 コラムの執筆はやめられない。読んでくださった方からの声が染みわたり、喜びとなって体中に広がっていくからだ。「共感したよ!」「次はいつ掲載なの」という温かい声。そして前回の記事を読んで「食いしん坊なんだね」のメール。どんな反応もありがたい。

 つたなくて手探りで、毎回先行き不透明な執筆だが、霧を払いのけて山登りをしている感覚で書き進めている。

 2週に1回のコラム執筆で実家の父との会話も増えた。「僕も書いたんだ」と父が差し出したのが祖父の人生についてのページだった。地域の老人クラブ結成40周年記念誌発行を受けて、執筆したという。祖父は戦前、貧しさを抜け出そうと南米ペルーに渡り、お金を稼いでセメント瓦ぶきの家を建てた。しかし空襲による大型爆弾投下で跡形もなく破壊され、悔しい思いをしたという。

 初めて知るエピソードばかりだった。印象深かったのは、戦時中にアメリカ兵が間近に迫った時、祖父がペルーで学んだ外国語で対応し、命拾いしたという話だった。祖父が海外に渡っていなかったら、外国語を学んでいなかったら、父も誕生せず、私もコラムを書くことができなかったかもしれない。人生は奇跡の連続で、偶然が重なり合う日々が続いていると感じた。

 今日は第6回世界のウチナーンチュ大会開会式が行われる。私も会場を取材する予定だ。生前の祖父を知る人に出会うことは年齢的に厳しいと思うが、祖父のように移民生活を送り、そしてふるさとへの想(おも)いを寄せる県系人の声を集めたい。その声がラジオを通じて誰かの心に響くといいな。

 南風執筆を支えてくれる温かい反応のように、私も誰かを支える仕事がしたい。淡い期待を抱きながら精いっぱい大会を取材していこうと思っている。
(金城奈々絵、ラジオ沖縄アナウンサー)