<南風>ひとはなぜ歌うのか


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 「バンドとかやったこと無い。一度でいいから出てみたい!」。ビジネススクールで知り合いになったおやじバンドのリードボーカルのライブを見に行った後、あまりの楽しそうな演奏に直談判した。カラオケオーディションで松田聖子を熱唱し、どうにかバンドメンバーにコーラスとして入れてもらえることになった。

 しかし、通信簿では音楽はいつも1か2。ろくに音符も読めないし、そんなに歌がうまい訳でもないのに、ただ一度出てみたかった。どうにか、コーラスの一人として入れてもらったが、やはり素人。練習は大変だった。そもそも音が外れているといわれても、分からない。結構、大変だった。精神的にも。

 ひとはなぜ歌うのか? 非常に哲学的な問いだが、音楽の力はみんな知っている。楽しいパーティーに楽しい音楽は欠かせない。つらい時、苦しい時に音楽を聞き、涙を流して、励まされた経験は誰でもあると思う。私も本土にいた頃、ふとラジオから流れてきた三線の音に、不意に涙がぽろぽろ出てきて、自分でも驚いたのを覚えている。

 アメリカでは、「ミュージシャンズ オン コール」という病に苦しむ人たちの元へミュージシャンが赴き、患者が大好きな歌を歌う、というNPOが注目されている。ボブ・ディランがノーベル賞を受賞したニュースも世界中で注目された。まさに音楽の力だ。

 どうにか参加させてもらっているおやじバンドも、練習を重ね、ライブハウスでの出演も数回こなし、無事に晴れのステージに立てそうだ。

 今週末11月5(土)、6(日)の2日間、沖縄セルラースタジアム那覇で第11回おやじラブロックフェスティバルが開催される。ぜひおやじたちと一緒に歌って踊って、音楽の力を感じてほしい。We Will Rock You!
(寺田克彦、テラ・ウェブクリエイト社長)