<南風>識名園の秋


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「夜な夜な光が差す洞穴がある」。琉球八社のひとつ、織名宮にまつわる話の始まりだ。那覇市内の中高生が演じる創作演劇と伝統芸能を組み合わせた「識名演劇」の一場面でもある。本番は世界遺産特別名勝である識名園にて開催される識名園友遊会だ。

 100団体に上る企業・自治会の協賛で運営され、那覇市真和志地域の伝統芸能が結集し、自治会や学校、公民館で活動している老若男女が発表・体験交流する。

 前回、自治会を核として残る伝統芸能や地域活動の可能性を書いた。世代間、地域間をつなぎ、格差を乗り越える力を秘めている。加えて人間性を高め、心身を鍛える役割も担ってきた。内閣府による「文化に関する世論調査」によると9割の国民が「非常に大切・ある程度大切」としている。

 それなのに、なぜ自治会加入率が下がり、伝統芸能・地域活動の担い手が減少しているのだろうか。

 文科省は少子高齢化社会での高齢化や単身世帯の増加、経済情勢だとしている。言い換えると、世代をまたいで同じ地域に長く住んでいる人の減少と、高い貧困率が示すように生活にゆとりがなく、優先順位が低くなっていることではないかと思う。

 地域活動や伝統芸能が生きる力を育み、就職する企業で求められる力が養われるというアプローチがもっと必要かもしれない。数世帯同居の定住促進や職場環境での理解も必要だろう。

 今年、初めて「地域を担い、企業で活躍する人材を育むには」をテーマに勉強会を行った。主催は、識名園友遊会を支える真和志地域の自治会長を中心とした組織だ。表には出てこないが、多くの大人が地域や子どもたちに寄り添い、汗をかき事業ができている。

 芸術の秋、真和志芸能が結集する11月27日織名園へ行ってみませんか。
(南信乃介、NPO法人1万人井戸端会議代表理事)