<南風>あした天気になぁれ


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 あした天気になぁれ。そう言って、空に靴を飛ばしたのは学校帰りの夕暮れだった。靴が表か裏かで、晴れか雨かを占った。今の子供たちはそんなことする前に、スマホを駆使して明日の天気を知るのだろうか。

 担当番組にお天気コーナーを設けたのがきっかけで、気象学に関する本を読み始め、天気について学ぶようになった。いつか自分で天気を予報できるようになれたら、という思いから勉強を始めたが、ザ・文系の私には難題だらけ。公式なんて模様に見える。くじけそうな時、先人のエピソードが私を励ました。

 例えば、大自然からのメッセージと言われる雲。空に浮かぶ雲を形で分類しようとした第一人者がイギリスの気象学者であるルカ・ハワードだ。ルカは、巻雲、積雲、層雲の3つの基本形を決め、その基本形を基にして雲を7種類程度に分けた。

 その後、アバークロンビーというイギリスの気象学者が実際に世界を巡って世界中の雲が同じ分類法で分類できることを実測で突き止め、それを基にさらに研究が進み、1896年に世界気象機関(WMO)から世界初の国際雲図帳が出版された。(秀和システム、岩槻秀明著「気象学のキホンがよ~くわかる本」より)

 またコンピューターが実用化される前に、6時間後の予報を1カ月以上かけて手書きで計算した研究者もいる。導き出された計算結果は、非現実的で失敗となったが、今日の天気予報につながっている。そういえば取材で出会った研究者がこんな話をしていた。1年のうち364日失敗しても、1日でも成功があればまた前向きに頑張れる。

 トライ&エラーを繰り返して人は成長していける。今日が雨でも明日は晴れるかもしれない。人生においてもそれは一緒。何より雨も曇りも晴れも全て必要なのだと思う。
(金城奈々絵、ラジオ沖縄アナウンサー)