<南風>出産時の想定外


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 出産予定日をだいぶ過ぎた午前2時、お腹が痛くて目覚めました。これがうわさに聞く陣痛なのか。

 でも耐えられない痛みではないので陣痛ではないかもしれない、陣痛と思う自分がいるから痛い気がするのだ…などと禅問答のようなことを思いながら数時間。

 病院に着いたのは午前6時。7時47分には息子誕生のスピード出産。

 そもそも陣痛は痛いものだと聞きすぎて、まさかあの程度の痛みだとは思ってもいませんでした。さらに出産自体も、確かに痛いけれど一瞬の出来事なので大したことはありません。

 それよりも想定外だったのは出産で力みすぎて痔(じ)になったことです。これが侮れない痛さ。出産の痛みより、こっちの方がよっぽど痛い。地味に痛い。まさに想定外の痛さ。

 さらに出産で想定外だったのは、立ち会った夫の感想です。「感動的だった」という言葉を期待して「どうだった?」と聞くと、「出産は作業だな」とのこと。

 彼いわく。工事現場でトラックを「バック、バック」などと誘導して作業する、あれだと思ったと。

 確かに陣痛の波を見ながら助産師が「力んで、力んで」と声掛けしていましたので、それが工事現場を思わせたようです。育児書などに出てくる立ち会い出産の感想とは全く違うもの。まさに想定外。

 もう一つの想定外は、出産後に母乳を出すため、助産師がしてくれるマッサージです。それはマッサージなどという生ぬるいものではなく、乳首をこれでもか、というほどつまむことです。

 抜群に痛い。それに、こんなに乳首を触られたことはありません。気分は乳牛。

 他にも想定外のことが起こりますが、明日はどうなるのか、楽しんで過ごしています。
(宜寿次政江、HIV人権ネットワーク沖縄副理事長)