<南風>イメージに忠実な脳


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 私たちの脳は、いかにイメージに忠実かを知った。
 私は高校時代、ストリートダンスに夢中だった。

 あるダンスイベントに出場するため、仲間とともに、連日練習に励んでいた。イベントまで1週間と迫り、夜遅くまで続く練習には、緊迫感が漂っていた。

 仲間の動きが一人、また一人とそろっていく中、難しい動きの振りに、私は苦しめられていた。一度も最後まで踊り通すことができず、大きな不安と焦りが私を襲った。

 その夜、練習から帰った私は、39度の熱を出し、インフルエンザに倒れてしまった。動けない体ともうろうとする意識の中、頭によぎったのは「出場断念」の文字。布団の中で寝込む私は、悔しさで涙が止まらなかった。

 体調は一向に良くならず、天井を仰いでは、ダンスのことばかり考えていた。頭の中には音楽が流れ、練習風景が鮮明に映った。いつしか私は、頭の中で踊り出していた。

 脳とは面白い。

 実際に練習で踊れていたところは、頭の中でもスムーズにイメージできる。しかし、練習でつまずいていたところは、イメージすら難しい。

 私は、一つ一つの動きを丁寧に思い出し、頭の中で何度も何度も繰り返した。すると、難しかった振りも、最後にはスムーズに踊れるイメージができた。

 寝込んだ3日間、実際に体を動かしての練習は一度もなかった。しかし、仲間との練習に戻った時、すごいことが起きた。一発目で、一度も間違えることなく、初めて完璧に踊れたのだ。

 きっと、脳がイメージを必死に再現しようと頑張ってくれたのだろう。あの時、「出場断念」を強くイメージしていたら、本当にそうなったに違いない。

 だからこそ、頭の中は、なるべくポジティブなものだけで埋めたいものだ。
(比嘉具志堅華絵 ハワイ沖縄連合会会員、『SHINKA』副会長、1級建築士)