<南風>出会い直す場 エイサー祭り


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 大正区の千島グラウンドで開催される「エイサー祭り」は今年で42年目を迎えました。

 昔から、大正区には沖縄から多くの若者が仕事を求めて移住しました。しかし、ウチナーグチが通じない、早口の大阪弁が理解できないなどのトラブルも多く、ある時、工場で孤立した沖縄出身の青年が放火をしてしまって人が亡くなり、その青年も自ら命を絶つという事件が起こりました。

 これを契機に、1975年に大正区の沖縄青年が集い「沖縄青年の祭り」が始まりました。懐かしい故郷の文化で誇りと自信を取り戻し、自分たちを守ろうという、沖縄青年にとって大きな力を生む祭りでした。

 その小さな祭りは年を重ね「エイサー祭り」と名称を変えて、今や2万人が集まる大正区有数の祭りとなりました。

 大正区で関西沖縄文庫を主宰する金城馨さんは、沖縄青年の自己防衛の意味から始まったエイサー祭りは、今はさまざまな人が「出会い直す」場となっていると言います。

 沖縄出身の人、そうでない出身地の人。過去の軋轢(あつれき)や偏見があっても、沖縄伝統文化の力強さ・美しさ・楽しさに包まれたエイサー祭りの場に立つと、伝統文化の力で今までの固定された関係がほぐれ、新たな対話が始まる。それが「出会い直す」ということです。

 そして、エイサー祭りでは、観客一人一人が自分の好きなように祭りを楽しみます。民謡を聴きながら泡盛を飲むオジィ。懐かしそうにエイサーを見るオバァ。カチャーシーを踊る若者。一人一人が「個」の思いを持ったまま共に楽しむ。そんな「異和共生」の姿がここには自然に現れています。

 自己防衛から始まり対話する姿勢に転じたエイサー祭り。「異和共生」の文化を育む大切な場と言えます。
(筋原章博、大阪市大正区長)