<南風>沖縄型植物工場の確立


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 最近、台風や天候の影響で全国的にレタスやキャベツなどの葉野菜が高騰、県産野菜も10月の高温が響いて品薄が続いている。その影響は家庭だけでなく外食産業、ホテル、学校給食にも波及しており、関係者は困惑している。

 そこで活躍しているのが、モヤシ、カイワレ、豆苗(とうみょう)といった県産の発芽野菜だ。これらは工場で生産するため、年間を通して安定供給でき、しかも安価だ。今、家計の救世主となっている。

 その中の「豆苗」を生産しているのが、沖縄村上農園(大宜味村)という企業で、話題の「植物工場」で野菜を生産している。操業4年目だが、1年目で黒字という驚くべき成果を出した。豆苗以外にも、ブロッコリースプラウトなどの機能性野菜を生産している。

 植物工場は、次世代型農業として全国でも多くの企業が参入しているが、成功例は少ない。主たる要因は、建設や照明設備費の高さ、冷暖房費の高さ、限定される生産物、栽培管理の難しさ、などである。大企業でさえ、事業からの撤退が相次いでいる。

 ではなぜ、沖縄村上農園はその植物工場で成功しているのか。まず、商品力、生産技術、ノウハウが優れている。次に入居している大宜味村の賃貸工場の家賃が安いこと、そして、自然光と気化熱冷却を活用した生産方法なので、照明や冷房設備が不要なことなどが理由に挙げられる。植物工場の不利な部分を克服したことが成功要因となっている。同事業に関わる企業や研究者には大いに参考になると思う。

 植物工場は20年程度の歴史しかない。よって、品種、設備、生産方式の改善の糊代(のりしろ)は大きい。沖縄では、他にもいくつか植物工場の計画があるが、ぜひとも成功して、沖縄型植物工場と言うべき新産業を確立してもらいたい。
(桑江修、沖縄県工業連合会専務理事)