<南風>少数意見入れた「最大幸福」を


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 今の世の中、おかしなことばかりです。善良な市民がいつも犠牲となり、まじめに生きている人ほどばかを見る世の中ではないでしょうか。そんな気持ちにさせる一通のメールが届いたので紹介します。長崎大に勤める友人からです。

 皆さんはBSL4という言葉を耳にしたことはありますか。これは、「Biosafety Level」の頭文字を取ってBSLと呼ばれるのです。

 細菌やウイルスなどの微生物・病原体など危険度に応じて1から4までの数字が付けられています。その中でも、エボラ出血熱や天然痘ウイルスなど地球上で最も危険とされる病原体9種類を取り扱う施設がBSL4施設です。現在、国内に2カ所あるBSL4施設は住民の反対でレベル4として使用できない状況です。

 国際化が進み、これまで日本で確認されていなかった病原体が侵入する可能性が出てきたとし、政府は長崎市に設置を求めています。

 メールの本文です。「長崎のBSL4計画、11月14日に、菅官房長官が長崎市長を呼びつけて、『国にとっては極めて重要で、大事な危機管理上の施設』と言って以来、市長は『市民の理解が前提』との約束をほごにし、建設への全面協力を始めました。それ以来、近隣が騒然となり、私も忙しくなっています」

 英国功利主義に用いられたJ・ベンサムの「最大多数の最大幸福」という言葉が頭に浮かびます。できるだけ多くの人が最大の幸せをもたらすことが善である。

 日本全体から見れば、沖縄の米軍基地もしかり、辺野古新基地も高江ヘリパッド建設もしかりです。多くの人が幸せであれば、少数の犠牲には目をつぶらねばならないのでしょうか。少数であっても、皆が納得できる提案を採用するべきだと私は思います。
(木村真三、放射線衛生学者)