<南風>師走の団結


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 公民館に勤めるスタッフHさんが長期療養に入った。仕事に慣れてきたHさんは、若くして抱えていた難病の影響で体調を崩したのだ。急ではあったが、「こんな日もある」と覚悟はしていた。

 厚生労働省によると、治療が難しい難病を抱える人は全国で約150万人に上る。小学校区(那覇市だと1万人が住む範囲)で約118人いることになる。恥ずかしながら、Hさんを採用する時に初めて実情を調べた。急な体調の変化が起きやすく、さまざまな困難を同時に抱えている場合も少なくないため、地域の支援と職場の理解も必要だ。

 最近、繁多川公民館を利用する方の「視覚障がいのある人の就労支援でマッサージがしたい」との問い合わせがきっかけで、那覇市の公民館で障がい者の就労支援のための販売や体験が可能となった。私たちは孤立しがちな方々がどう地域で自己実現し、支え合えるかという視点を大切にしている。

 多様な価値観を認め合える豊かさや強さがあれば、一人一人が社会を活性化し持続できる力になれるからだ。その中に、高齢者もいれば、子どもたちもいる。そして障がい者や難病を抱える方もいる。学びたいことを学べ、仲間と研さんし合いながら自分を高め、やりがいのある仕事をし、恋愛をして…。家庭も築くかもしれない。多くの人がそうであるようにHさんにも同じような選択肢があってほしい。

 いま私を含めて8人のスタッフがいる。ひょんなことから集結したこのメンバーの一人一人が私にはない力を持っている。行事の多いこの時期を1人欠けても乗り切ろうと頑張っているスタッフを誇りに思う。

 Hさんが自己実現できる地域や職場は、ほかの障がいや難病を抱える人の自己実現を果たす環境でもあるはずだ。
(南信乃介、NPO法人1万人井戸端会議代表理事)