<南風>なきじんYes!あがシマYes!


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 今帰仁グスクの御内原(うーちばる)からの眺めは、世界遺産のグスクの中で最も美しい風景だと自負しています。北にひらけた海は限りなく、人工物で遮られることのない海岸線とサンゴ礁の白い線は、今帰仁唯一の絶景で、私のひそかな誇りです。

 今年は北山王が中山に滅ぼされて600年という節目の年。「今帰仁グスクを学ぶ会」が北山時代を再構築する講演会を開催し、北山王の次男系統という伝承を持つ沖永良部島では「世之主六百年祭」が盛大に行われました。この祭りに参加し、熱烈な歓迎を受けたのが、以前にご紹介した現代版組踊「北山の風 今帰仁城風雲録」です。

 『球陽』などの伝承によると、北山王攀安知(はんあんち)は武勇に優れ、淫虐無道、家臣の本部平原(もとぶてーばら)は勇猛だが欲深い人物として描かれ、北山を滅ぼした側の視点が反映されています。

 けれど「北山の風」では大まかな流れはそのままに、攀安知を、妻子を愛し、彼なりに国を守ろうとした王として描き、本部平原は民への同情の結果、主君を裏切ったものの、その罪悪感にさいなまれる人物として登場します。時代の中で誠実に生きた人間の姿や、平和な北山王国誕生の喜びに、深い共感と感動を覚えます。

 新しい北山の物語は、演じる子どもたちだけでなく、見ている子どもや大人たちにも心の強さを教えます。それは、わたしはどう生きたいかを希望し、恐れに向き合う力。自分のいのちを喜び、磨く力。いまここに在る自分を「イエス!」と肯定できる力です。

 楽しさと平安に満たされた村作りは、「私の花」から始まり「あなたの花」へとつながっていく。素朴だけど、心と心が通い合う花の道。星晴れの道。

 感謝をこめて、この花を皆さまに贈りたいと思います。半年間ありがとうございました。
(石野裕子、今帰仁村歴史文化センター館長)