<南風>心の成長


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 衣替えは時に残酷だ。タンスで眠っていた洋服を引っ張り出し、半年ぶりにフィッティングをしていたら、ところどころパツパツで肥えたことを自覚した。

 成長期はとうの昔に過ぎたので、縦ではなく横に大きくなっていくのは自明の理。こうした大人のカラダの成長はちょっとした悲劇だが、できなかったことができるようになったり、気がつけなかったことに気づけるようになったりする心の成長は気持ちを温かくする。

 入社当時から取り組んでいる目の不自由な方への取材も私を成長させてくれた。

 県内では視覚に障がいがある方は障害者手帳の交付数から約4200人いると推計され、中途失明者は増加傾向にある。人は視覚から情報の80%以上を得ていると言われ「見える世界」のみに頼りがちだが、取材で出会った視覚障がい者の方々が「耳を澄ませ」「香りをかいで」「指先で触れること」で、いろいろな世界の感じ方ができることを私に教えてくれた。

 一方で心配になったのは、視覚障がい者が緊張を強いられる道路の横断だ。道を渡るタイミングを知らせる音の出る信号機があれば負担は減るが、まだ不足しているのが現状だ。

 ラジオ沖縄では音響付信号機の設置を呼び掛けるチャリティー番組「ラジオチャリティーミュージックソン」をクリスマスイブの正午から24時間生放送する。黄色い募金箱を見かけたら、温かい気持ちを寄せていただけたらと思う。

 さて、このエッセーも私を成長させてくれた。今回が最後の執筆となる。執筆の機会を与えてくださった琉球新報社の皆さま、読んでくださった読者の方々に感謝申し上げます。最後にお気に入りの名言を。

 「目に見えるものは移ろいやすいけれど、目に見えないものは永遠に変わりません(ヘレンケラーの言葉)」
(金城奈々絵、ラジオ沖縄アナウンサー)