<南風>ローカルヒーローが地域を動かす


社会
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 お正月を久米島で迎えることになるなんて、数年前には想像もしていなかった。

 住み慣れた関東を離れて移住したのは4年前。参加していた東京のNPOが、久米島高校の魅力化支援をすることになり、担当者を探しているという話を聞き、立候補した。迷わず手を挙げた…と言いたいところだけれど、ちょっと迷った。

 それまで沖縄に行ったのは、大学の卒業旅行の1回だけ。暑いのも正直苦手。でも、海洋深層水を使った発電やさまざまな産業の可能性があること、町を挙げて高校の活性化に取り組んでいることなどを聞いていたら、数年後には久米島に住んでいることを誰もがうらやましく思うようになる予感がした。こんなチャンス、きっと二度とない。今まだ30歳だから、3年くらいなら…。そう思い飛び込んだら、島の男性とご縁あって定住することになった。

 それまでは東京で国際協力の仕事をしていた。アジアの国々の環境保全や農村開発に関わる中で、地域が良くなるためには、そこに住む人たち自身が地域のために動くことが重要であり、それは海外でも日本でも、地方でも都市でも同じだということに気付いた。

 月刊『ソトコト』編集長の指出一正氏の近著『ぼくらは地方で幸せを見つける』(ポプラ社)は、日本各地でローカルに価値を見いだし、仲間を巻き込みながら、地元の底力を引き出す若者たちを「ローカルヒーロー」として紹介している。彼らの中には地元出身者もいるし、移住者もいる。

 一人で劇的な奇跡をもたらすわけではないけれど、その地域への熱い思いをまわりに広げていくことで町を動かしていく存在。久米島にも、いるいる。私もそんなローカルヒーローたちとつながりながら、できることをお手伝いしていきたいと思う。
(山城ゆい、久米島高校魅力化事業嘱託員)