<南風>地域主体のエコツーリズム


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 「沖縄でやってくれるなら引き受けます」。雪がちらつく12月の東京。日本エコツーリズム協会を年度内に設立させるための会議で、私はそう発言しました。野生生物保護センターの仕事で西表島に通っていた頃のことです。

 環境庁外郭団体理事だった真板昭夫氏の強烈な引きでエコツーリズムに出会った私は、東京に通いながら人脈を広げ、基礎を学んでいたのです。

 地域資源を掘り起こし、磨き、それを生かした商品(体験プログラム、特産品、郷土料理など)を提供することで「観光振興」と「地域資源の保全」を両立させる活動がエコツーリズムです。資源の発掘や価値づけに外の声は欠かせませんが、最も大切なのは地域の主体性です。

 旅行会社が作ったパンフレットでツアーを買うしかなかった時代に、「地域が主役」「身近な自然や文化の体験を」などと提唱した訳ですから苦戦しました。

 かくして、1998年3月、兼高かおる氏を会長とする日本エコツーリズム協会は沖縄の地で設立され、総会はコンベンションセンターで分科会はカヌチャリゾートで開催しました。大会予算は本土側が用意し、歓迎パーティ費などは、沖縄観光コンベンションビューロー、沖縄電力や白石など県内企業の協賛でつくることができました。

 気が付けば、20年で有人離島39島のうち学校がある29島の活性化に携わり、今は「沖縄離島交流促進事業」や「島あっちぃ」など、一括交付金を活用してエコツーリズムを実践できるようになりました。うれしい限りです。

 先月、西表島エコツーリズム協会20周年記念式典で感謝状をいただきました。これは理解されなかった時代から一緒に頑張ってくれたみんなのものです。他界した仲間たちの笑顔が見えるようです。
(開(比嘉)梨香、カルティベイト社長 沖縄海邦銀行社外取締役 元沖縄県教育委員長)