<南風>子どもの貧困(1)


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 一昨年あたりから県内外のメディアから「沖縄のひとり親の現状について」「沖縄のシングルマザーの抱える問題について」取材を受けたり、シンポジウムで話すことが急激に増えた。

 十数年の活動を振り返ってみても、今ほど「シングルマザー・ひとり親」が社会から関心を向けられたことはない。ただ、この状況は深刻な「子どもの貧困」がもたらしたものだ。

 沖縄県は全国に先駆けて子どもの貧困に関する調査を行い、昨年その調査結果を発表した。子どもの相対的貧困率は全国平均の約2倍、ひとり親家庭の貧困率も高くなっていることが明らかになった。

 報告書には子どもの貧困の指標として母子世帯の出現率が全国平均の2倍であること、年間就労収入が155万円と全国平均より26万円下回っていることなど、さらに厳しい状況が示された。意外に思うかもしれないが、沖縄と全国の母子世帯を比較したとき、就労における正規・非正規率は同じである。一方就労率は全国平均より7ポイントも高く87%が働いている。

 収入にこれほどの開きがあるということは、つまり労働単価が低いということだ。これでは児童扶養手当と児童手当を加えても手取りが20万円に届かない(児童手当は15歳で、児童扶養手当は18歳で支給が終わる)。

 今、県はこれまでにない予算をつぎ込み、さまざまなメニューの子どもの貧困対策に取り組んでいる。しかし、対処療法でしかないように思う。根本的な貧困対策の一つは親の収入、特に女性の賃金を上げていくことだ。正規は非正規の2倍以上の収入があることから、正規率を上げ、子どもを持つ女性が働き続けられる環境を整備することが必要だ。当然のことだが、経済界と一緒のテーブルに着き、本気で議論しなければ実現しない。
(秋吉晴子、しんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄代表)