<南風>開花後押しする「学習センター」


社会
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 春めいた陽気に、庭の寒緋桜が満開となった。サクラサク、と言えば大学入試。今日から国公立大学の前期試験が始まり、受験シーズンも真っ盛りを迎えている。久米島高校生対象の町営塾「久米島学習センター」にも、毎晩遅くまで机に向かう受験生の姿がある。

 2年前に開校した学習センターには、地域おこし協力隊制度で集まった、出身も経歴もさまざまな5人の講師がそろう。理系・文系、受験対策、苦手克服など、生徒個別のニーズに応えられる陣容になっている。開校当初は生徒が集まるかどうか心配だったけれど、そんな懸念をよそに、多いときには全生徒の4人に1人が通うまでになった。今ではスペースが足りなくなるのではないかと心配するほどだ。

 1月のある日、教室をのぞいてみた。この日の授業は、さまざまなテーマについて生徒自身が考えたり、討論やプレゼンテーションをしたりするゼミ形式の「ちゅらゼミ」だった。答えのない問いについて考え、課題解決力を身に付けることを目的としたこの授業は、久米島学習センターの特色の一つだ。

 これまで、「砂漠からの脱出」「デザイン思考」「世界の変え方」など、大人にとっても興味深いテーマで実践されてきた。

 今の小学生の65%は、現在はない職業に就くという予測もある時代だ。生徒たちには、そんな変化の激しい社会を生き抜いていく力を付けてほしいと思う。文科省が検討中の大学入試改革でも、思考力や判断力、表現力を重視する方向性を打ち出しており、「ちゅらゼミ」はそれを見据えた授業でもある。

 授業見学の終わりに、コメントを求められた。一斉に向けられた生徒たちのまなざしは真剣で力がこもっていて、花開こうとする蕾(つぼみ)のような、初々しい頼もしさを感じた。
(山城ゆい、久米島高校魅力化事業嘱託員)