<南風>必ずいるから


社会
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 「ナニジンとか、関係ないよ。みんな地球人だよ」

 この言葉が嫌いでした。

 「『関係ない』はあなたの都合でしょう。日本の植民地にされたという過去を持つ、朝鮮人の私には、関係があるんです」

 そうつぶやいていました。心の中で。自信がなかったのかもしれません。

 弱くて繊細で傷付きやすくて、プライドだけは高くてたいしたことはできていなくて…属性(朝鮮人であること)以外の、「自分の個性」に自信が持てませんでした。

 「どうせ『日本人』には分からないでしょ」

 自分が少しでも傷付かないために、必死に属性にしがみついていたのかもしれません。

 でも。

 多くの人に会うにつれ、出会えるようになりました。「白充」そのものに、向き合ってくれる人に。

 単なる「朝鮮人」としてではなく、かといって「朝鮮人抜き」としてでもなく。弱さも繊細さも含めて、いろんな要素を持ち合わせた「白充」に、正面から向き合ってくれる人に。

 今でも、冒頭の言葉が好きになった訳ではありません。やっぱり嫌いな気がします。けれど、「本当の自分」にどこか自信を持てない人に、これだけは伝えたいのです。

 必ずいるから。

 あなたに寄り添い、あなたが嫌いなあなたの個性に、正面から向き合ってくれて、あなたを本気で怒ってくれて、心の底から愛してくれる人。

 傷付くことが怖くても、あと1回、信じてください。そばにいる人と、真っすぐに生きることと、あなた自身を。

 あなたが持っている魅力にひかれ、あなたに寄り添ってくれる人は、必ずいるから。

 そこに、ナニジンとか、ナニンチュとかは、関係ないから。
(白充、弁護士)