<南風>食べることは生きること


社会
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 先日、久米島に来て2度目の田植えをした。私の地元では田植えと言えば5月だが、沖縄では3月にはもう植えることができ、さらには二期作が可能と聞いて驚いた。

 以前東京に住んでいた時、米の収穫体験のために電車とバスに揺られて千葉県まで行った。それが今は、田んぼは家から徒歩圏内。しかも東に山、西には夕日が沈む海と、なんとも贅沢(ぜいたく)なロケーションだ。

 久米島は、離島には珍しく水が豊かで、昔から稲作が盛んだったという。40~50年前に撮影された写真を見ると、本当に海のすぐそばまで田んぼが一面に広がっている。現在はその多くがサトウキビ畑に転換され、一部地域にのみ棚田が残っている。

 地元で昔から米を作ってきたおじさんが私たちの先生だ。苗を植える時は、まだ小さな苗が風で倒れてしまわないように風向きをみて植える。収穫した米を脱穀し、もみ殻と分ける時にも風を利用する。まだもみが混ざった状態の米を上からさらさらと落とすと、もみ殻だけが風で飛ばされていく。おじさんがやると簡単そうに見えるのに、私がやってもまったくうまくいかない。風向きを読むために草をくわえたおじさんが、急にカッコよく見えた。

 久米島には、島大根など古くから作られてきた作物があるという。親くらいの年齢の人たちが、「昔はこんなものを食べたねぇ、おいしかったねぇ」と話すのを聞くと、うらやましくなる。同時に、たった一世代の間に多くのものが忘れられ、失われてしまったことに驚く。

 You are what you eat.という言葉があるけれど、「何を食べるか」は「どう生きるか」につながっていく気がする。島の食や文化を形作ってきたものは、できるだけ受け継ぎ残していきたいと思う。
(山城ゆい、久米島高校魅力化事業嘱託員)