<南風>奇跡


社会
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 新明解国語辞典によれば、奇跡とは「実際に起こるとは考えられないほどの不思議な出来事」とされている。今から246年前、1771年4月24日に発生した明和の大津波の際の竹富島がそれである。マグニチュード7・4の大津波は最大で28丈2尺(85・4メートル)にもなったと言われ、石垣島では一瞬のうちに9313人が津波の犠牲になった。

 石垣島に隣接するお皿のような竹富島(最も高い標高はわずか23メートル)は津波被害が皆無だった。正確には、当時石垣島に渡った数人が被災しているのだが、これはもう奇跡そのものだろう。奇跡が起きた理由は不明だが、一説では竹富島周辺の複雑なサンゴ礁の海底地形が何らかのクッションの役目を果たしたのではないかとも指摘されている。

 以来、竹富島は神の島とも言われるようになった。この島は23の数字とも縁が深い。北緯23度、東経123度に位置し、年間降雨量は2300ミリにして年平均気温は23度、標高は先に述べたが、重要伝統的建造物群保存地区(街並み指定)が全国で23番目である。

 このような驚くべき奇跡は、2004年に発生した沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故でも起きている。

 ヘリは1号館ビルをかすめて落ちたが、後部ローターの大きな機体はかなり離れた集落のエアポケットのようなお墓の空き地に、パズルのピースを当てるように落ちた。あまつさえ、墜落の衝撃でヘリの細かい部品が大学周辺に飛び散ったにもかかわらず、けが人が一人も出なかったのは奇跡そのものとしか言いようがない。そう言えば、その日は13日の金曜日だった。

 キリスト教徒の忌み日なので、パイロットも気を付けたろうと考えてみる。それにもかかわらず大きな事故が発生したのだから、やっぱり13日の金曜日は忌まわしい日だと、彼らは結論付けたはずであろう。
(渡具知辰彦、県交通安全協会連合会専務理事)