<南風>古酒を育てる沖縄の文化


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 先週、某百貨店の東北物産展で日本酒の飲み比べセットを飲んでいたら、「泡盛以外も飲むんですね」と見知らぬ女性が声をかけた。聞くとボクのコラムを楽しみに読んでいるというので、「泡盛以外のお酒を飲むことも勉強になるんですよ」と答えた。実際に日本酒を口に含むとコメの香りや甘味、コクなど同じように米を使う泡盛と共通点があり、さらにコメの旨(うま)みや麹(こうじ)の香り、ふっくらとした風味、味の厚みや濃淡、ノドの奥から鼻に抜ける余韻などは泡盛の試飲の時、大いに参考になるのである。そんな説明をしながら日本酒の味を確認したあと、別の場所で行われた「スパークリング泡盛」の発表会に行き、新しいタイプの泡盛を楽しんだのであった。

 翌日、本島最北端の酒造所がある大宜味村田嘉里で「すべての家庭の床の間に古酒甕を」を提唱する山原島酒之会主催の「第三回泡盛古酒を育てる講座」に行った。講師の島袋盛敏さんは「泡盛は仕次ぎという技法で世界で唯一古酒作りができる。子や孫のために50年や100年古酒を育てよう」とあちらこちらで仕次ぎの実践講習を行い、古酒作りこそが沖縄文化を継承し発展につながるという。講習会のあとの交流会で関係者と話をしているうちに、ボクも機会があれば古酒を育てたいと思った。

 早いものでこのコラムも今回が最後となった。ここで泡盛について書いたことで多くの泡盛ファンから声をかけられるようになった。実をいうとボクは泡盛業界では新参者で、泡盛新聞と出会ったことで泡盛の魅力を紹介するようになっただけである。泡盛ファンにはボクが足元にも及ばない大先輩やコアな泡盛マニアも多い。その彼らの泡盛に対する思いを少しでも読者に伝えられたら幸いであると思い、ペンを置きたいと思う。半年間、ありがとうございました。
(嘉手川学 沖縄ふうどライター、沖縄泡盛新聞編集委員)