<南風>医師から建設業へ


社会
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 私は、昨年の10月まで医師として働いて来た。所謂(いわゆる)、二足の草鞋(わらじ)を履いていたのである。故あって医師を辞めて建設会社の会長を勤めることになった。

 6年前、弊社は赤字続きであった。野となれ山となれとでも思ったのか、父は会社を健全化するようにと私に頼んだ。当時の私は、医師を辞めるつもりは些(いささ)かも無かった。

 言わずもがな、医は仁術である。正道にある医師は、利益の一切を追求しない。患者さんに至誠をもって寄り添い、病を癒やし取り除く者である。

 私は、税理士事務所からくる毎月の貸借対照表や損益計算書を一度も見たことが無かった。ひたすら医師の務めを果たして、それで食えなければ辞めればいいだけである。幸いにも多くの患者さんに来て頂き、仕事を継続することが出来た。

 会社の経営となるとそうはいかない。多くの社員とその家族を守らねばならない。その為には、利益を出す必要がある。利益は血液に等しい。法を遵守した適正な利益を出すことは、経営者が最低限に為すべきことである。

 私は、父の願いを受け会社を善くすべく、経営に参画することにした。その日から午前1時に起きて出勤前の6時まで、簿記や会社法を含む経営に関する勉強を始めた。もとより稼げる会社であり、販管費を削減することで容易に利益は出た。

 然(しか)し、それでよしでは無い。筋肉質の稼げる会社にするのは当然で、更に社員とその家族を守り、人や社会に必要とされる善き会社にしなくてはいけない。

 一介の医師が、沈みかけた船を修繕し、荒波高い大海原へと出て行く。

 この先、医師の経験を糧に建設業の会長として、如何(いか)に考え行動しているのかをご披露出来ればと思う。

 世の人は 我を何とも言わば言え 我なす事は 我のみぞ知る龍馬
(東恩納厚、東恩納組代表取締役会長)