<南風>言語聴覚士、知ってますか


社会
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 言語聴覚士という職業を知っていますか? 言語聴覚士(Speech―Language―hearing―Therapist、以下ST)は、1999年に国家資格になった割と新しい資格だ。

 脳梗塞や交通事故の後遺症で言語障害が残り、コミュニケーションがうまく取れなくなった人や、うまく食べられなくなった人に対して理学療法士、作業療法士とチームになり、主に病院や障害者施設で働いている。

 その他、言語発達に遅れがある子ども、発達に凸凹があり人間関係がうまく構築できない発達障害の子どもや難聴の子どもへの聴覚保障など、コミュニケーションに不自由さや苦手さを持つ子どもから大人まで様々な人が対象になる。

 日本の高齢化は諸外国に例を見ないスピードで進行している。発達障害の子どもも増加傾向にある。

 障害があっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けていけるような、安心して子育てができるような、医療・介護・教育・予防・生活支援が一体的にできる街づくりが求められてくる。STの働く領域や需要は、病院などの医療現場から地域へと変化していく。

 先日、STが集う日本言語聴覚学会に参加してきた。アメリカでは、小学校、中学校などの教育現場にSTが在籍しているという。子どもや親にとって身近な存在であり、生活の中での困り事に、学校の先生とチームになり働いている。

 日本では子どもに関わるSTが働く場所が少ないため、支援が必要な子どもに行き届いていないのが現状だ。小学校の言語学級や特別支援学級にSTの専門性を活(い)かすことができれば、教育現場と連携していけるだろう。STはコミュニケーションという目に見えないものを扱う仕事で、仕事の内容が見えにくい仕事だが、需要は多く、これからは身近な職業になってくる。
(平良和、沖縄リハビリテーション福祉学院教員、言語聴覚士)