<南風>継続は力なり


社会
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 「継続は力なり」という言葉がある。小さいころから言われ続け、その大切さは重々承知している。いつもわが身に装備しておきたいフレーズでもある。私もこの言葉に憧れてダイエットを始めるが、妖怪・三日坊主につかまってノックアウト。自分の弱さやみじめさを露呈する毎日である。

 ホールの仕事をしていると、「その道何十年」というアーティストや「幼少からやっています」という演奏者と顔を合わせる。「継続は力なり」を体現し続けている人たちだ。常に向き合い続けるその精神力・忍耐力にちょっと嫉妬しつつも、彼らのパフォーマンスを目の当たりにすると圧倒的な迫力と人を包み込む包容力に脱帽する。「すごい」と感嘆させるだけでなく、心の中のズレをまっすぐに伸ばしてくれるそんな感覚にさせてくれるのだ。ホールの中が居心地のよいゆりかごのように真綿にくるまれたやわらかな空間に変貌する。

 はて、今まで私は何を継続してやってきただろうとふと思い返してみる。習字、そろばん、ピアノ、水泳…。うん、どれも長続きしなかった。少しできるようになるともう上手になった気がしてしまうこの性格が災いしているようだ。不惑を過ぎて5年も経(た)つが、いまだに惑わされてばかりである。ピアノ教室に通っていた小学1年の秋、発表会で「春のおどり」を演奏した。どんな曲だったか覚えていないが、曲名だけは覚えている。先生に褒められたからだ。ただし、この時が私の演奏人生(というほどでもないが)のピークだった。

 そのピークを「継続は力なり」で常に更新していくのが一流のピアニストの証し。ピアノとの出会いは3歳だというフランス人ピアニスト、ミシェル・ダルベルトが来沖する。十指が織りなす、荘厳でありながらも圧倒的な包容力を持つゆりかごを、8月6日大ホールでぜひ体感してほしい。
(山口将紀、浦添市てだこホール総務企画課チーフ)