<南風>プロの「自芯」


社会
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 専門家は二つのタイプに分けられる。機械の修理や外科手術といった、原因がはっきりしており、体系化されたスキルをもとに、問題を解決していく「スペシャリスト」。人の悩みや不安といった目には見えにくい不透明なものに対して、あらゆる手段で解決していく「プロフェッショナル」がいる。教員やセラピストなどの対人援助をする仕事では後者を目指したい。

 答えが明確なものは知識だけで解決できることが多い。しかし、学校現場や臨床現場では、知識やマニュアルに当てはめようとすればおかしなことになっていく。

 専門家は困りごとに対して、自分の持っている知識を並べ、答えを作り上げていくことで表面上解決したかのように見える。しかし根本的な解決にはなっていないことが多い。人がオンリーワンであるのならば解決策もオンリーワンでなければならない。その一つの解決策を見つける時、専門家と相談者の間にある上下関係の図式は邪魔になる。対等性を保ち、協創的対話を通して、本当の問題は何なのかを、お互いが納得できるように対話を繰り返すことで解決に導いていく。

 専門家任せではなく自分の人生は自分で決め、歩いていけるように、プロは相談者の物の見方や考え方を変えていくことが必要となる。持っている知識を引っ張り出し、使える知識にしていくことが、プロフェッショナルの仕事だ。

 先日プロだなと思うお坊さんに出会った。法事の意味、言葉の意味を聴くことで、義務としてやっていた行事に主体性を持って参加でき、癒やされた。

 スペシャリストの仕事はAI(人工知能)が対応する時代になるだろう。それは贅沢(ぜいたく)を生むが、豊かさを失う。AIに負けない知識を持つ自信はないが、AIに負けない「自芯」をプロフェッショナルとして持っていたい。
(平良和、沖縄リハビリテーション福祉学院教員、言語聴覚士)