<南風>私を変えたキャンプ


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 先週末、私にとって年に一度の夏フェスに匹敵する大イベント「第28回吃音(きつおん)親子サマーキャンプ」で滋賀県に行ってきた。5回目の参加だ。全国各地から130名前後の親子が毎年参加する。このキャンプにはスイカ割り、花火といった娯楽が一切ない。吃音と向き合うことを目的に、吃音について同世代のお友達と話し合い、考えたことを作文に書き、演劇を通して表現する力を身に付けるといった内容を2泊3日行う。

 このキャンプが私のST(言語聴覚士)としての在り方や子育ても含め、人生を変えてくれた。5年前、STとして、吃音で悩んでいる子供や、親に対してできることはないかを探す目的で初参加した。子供たちの話す言葉の重さ、悩みの深さを感じた。どもる子供たちは日々サバイバルしながら生きている。言葉をとても大事にしている。一言一言、大事に大事に話す姿から、人として教えてもらうことがたくさんあった。

 「この素敵な空間、場を沖縄の子供たちにも経験してほしい」という思いだけで、去年11月に沖縄で初のキャンプが開催された。5年間は、何かにとりつかれたかのように走り続けてきた。どもる人たちの世界観が私を変えてくれた。

 今年のキャンプの劇は「モモ」だった。効率化を求められる現代。それを求めるあまりに失ったものはないか?ということを考えさせられた。

 夏休み終盤、我が家は宿題の山。息子の読書感想文を書くためにいろいろ話をした。「好きな事」と「夢中な事」は同じか? 基本どちらも楽しいことではあるが、夢中な事には真剣さや努力が伴ってくることに息子は気づいたようだ。いろいろ悶々(もんもん)としている6年生。私はどもる子供の世界に夢中だ。そんな息子の感想文の締めの言葉は「僕も夢中になれることを見つけたい」だった。
(平良和、沖縄リハビリテーション福祉学院教員、言語聴覚士)