<南風>他人事ではないLGBT


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 私の勤務している琉球大学法科大学院は、日本のロースクールでは初めて「性の多様性の尊重」を宣言している。性の多様性を尊重できる法曹(「アライ」)の養成と、全ての学生・教職員が、そのセクシュアリティを尊重され、安心して学び、働ける環境作りを目指している。さらに、日本の大学としては初めて、性の多様性の問題に特化して地方自治体(那覇市)と協定を締結している。法的知識の提供などが主たる内容で、パートナーシップ登録制度策定時には、学生・教員が協力させていただき、無料法律相談なども実施させていただいている。

 「性の多様性」とはどんなことだろうか。「LGBT」という言葉は聞いたことがある方も多いと思う。レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの頭文字をとったものだ。ごく簡単に言うと、自分の愛情が同性、もしくは異性と同性に向かう人がLGBである。また、生まれた時に診断された身体的性別と、自分の感じる自分の性別に違和感がある人がTである。LGBTに含まれないものもたくさんあるので、様々な性のありようを含む趣旨で、「LGBTQ(クイア等)」という言葉を使うことも多い。

 「私の周りにはいない」とおっしゃる方がいる。しかし、電通ダイバーシティ・ラボの2015年の調査では、約7・6%の人がLGBTであるとされた。沖縄において、比嘉さん、金城さんがそれぞれ約3・2%だ。知り合いに比嘉さんも金城さんもいないという方がいるだろうか。つまり、それは「いない」のではなく、「知らない」か、その人には「言えていない」だけなのだ。性のありようを理由に権利が保障されていない人が、皆さんの身近に確実にいるということ、決して他人事(ひとごと)ではないということを知ってほしい。
(矢野恵美、琉球大学法科大学院教授)