<南風>傷つけない傷つけられない


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 バラエティー番組などで、「オカマ」「オネエ」という言葉をよく聞く。自分のセクシャリティを公表(カムアウト)して頑張っている芸能人の方もとても増えた。この方たちの頑張り自体は素晴らしいし、いわゆるLGBT問題の可視化にもつながっている。

 しかし、扱う方には問題もあるように思う。こう呼ばれる人たちの中には、男性として男性を恋愛対象とするゲイの方、身体は男性として生まれ、自認する性別は女性だというトランスジェンダーの方、性自認がどちらとも言えないエックスジェンダーの方、自分に割り当てられた性別とは異なる性別の服装をするクロスドレッサー(異性装)の方などをはじめ、様々なセクシャリティの方がいる。この点は無視され続けている。また、からかいの対象として良いという印象を与える扱いも問題だ。

 これはどこの職場でも同じで、今年1月から男女雇用機会均等法に関してセクハラ指針が改正され、人の性的指向(誰を好きになるか)や性自認(自分の認識する性別)に関係する言動は、相手がどんな性的指向、性自認をもっている場合でもセクハラとなることがあると明記されている。

 一番の問題は、誰にとってもセクシャリティはその人の一部にすぎず、どんなセクシャリティの人であろうと、普通に勉強をして、どんな仕事についてもかまわないというごく当たり前のことが見えなくされてしまっていることだ。

 9月23日には沖縄で性の多様性の尊重を掲げる「ピンクドット沖縄」が那覇市のてんぶす前広場で開催される。琉球大学法科大学院も、日本で初めて性の多様性の尊重に関する催しに参加するロースクールとして、ブースを出させていたく。誰も傷つけない、誰も傷つけられない、そして誰もが尊重される社会の実現を強く願う。
(矢野恵美、琉球大学法科大学院教授)