<南風>94歳のおじい 舞台で踊る


社会
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 「舞台で踊ったのは私だけだったな」。94歳のおじいが初めて参列した披露宴の思い出をうれしそうに語ってくれた。その披露宴はもちろん私と連れ合いのだ。

 「結婚式、子どもをもつ、引っ越し、転職」を巷(ちまた)では人生の4大ストレスと呼ぶらしい。このうち3つを2年前経験した。それも2カ月という短期間。披露宴の5日後に交流会館のプレオープンというおまけつき。今考えると恐ろしい日程だ。

 一般的に、女性が率先して男性が受け身というイメージの結婚式だが、連れ合いは当初から披露宴に消極的。できるならパスしたい雰囲気満載。披露宴をするなら名護でという私の主張、さらに下降するテンション。

 なぜ、名護で披露宴をしたいのかは言葉を重ねて説明したが、心から納得はできなかったようだ。連れ合いは那覇育ち。当然親せきや友達もその周辺に住んでいる。呼ぶ人たちのことを考えると無理もなかった。

 私がこだわったのは高齢でも、体が不自由な人でも参列できる披露宴だ。しかも、園の外でやることも大切なポイントだった。

 これまで園にゆかりがあり園内の教会で式を挙げた人は何組かいたが、こと冠婚葬祭となると在園者は呼ばれなかったり、参列したことがないという人もいた。

 名護ならなんとか園からもたくさんの人が参加できる。そんな思いで私の我がままを通させてもらった。

 結局、いろんな予定が重なり園からの参加は20名程だったが、赤ん坊から100歳まで幅広い年齢層の方に参列してもらえた。新郎新婦と友達でアカペラしたり、カチャーシーで冒頭のおじいと舞台で抱き合って踊ったり、新郎新婦も十分楽しんだ披露宴になった。

 いろんな人の笑顔があり、私たちもパワーをもらえた。沖縄の披露宴って素敵です。名護まで参列して下さった皆さん、本当にありがとうございました。
(辻央、沖縄愛楽園交流会館学芸員)