<南風>藍壺で地域おこし


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 平成15(2003)年に古い藍壺の所在調査をしながら伊豆味地域の藍壺にまつわる歴史を知ることができた。伊豆味小中学校から山手に向かって進むと、喫茶店「せせらぎ」があり、横にはサラサラと音を立てて流れる小川がある。その川沿いに椀型の藍壺が複数あり、遺構として過去を知る手ごろな産業遺跡である。

 この道をさらに山手へ進んでいくと、壊れかけた複数の藍壺が木々の隙間から垣間見える。そこは上り下りが難しい谷底である。「昔の人たちはこんな山奥でも藍玉づくりをしていたのか」「夜は怖くなかったのか」と、過去の作業環境の厳しさに感動を覚える。伊豆味地域を散策すると、今でも多数の藍壺遺構を目にすることができる。

 このような年月を経た古い藍壺は本県の歴史文化を知る手がかりとして重要な遺跡ではないのか。市町村または県の文化財として指定できないのか。保存対策を講じる必要があるのでは…等々。そんな疑問を幾人かの文化財関係者に問うたことがある。しかし回答は必ずしも明確でなく、「産業遺跡は文化財になじまない…」「指定は難しいのでは…」との話であった。

 でも筆者は、地域社会の歴史文化を知る大切な手がかりだと未(いま)だにこだわり、先の回答に納得できないでいる。近年の製藍産業の実情を勘案すると、地域おこしに活用できるはずだ。

 保存状態のいい藍壺を文化財として指定し、小中高生に対する郷土学習の機会を創り出すことができる。6~7月と10~11月頃の藍玉づくりの季節は、個人や団体の藍染め体験学習ができる。県外の修学旅行生に対する体験学習も可能である。国の助成金を活用した地域創生事業として取り組む方法もある。欲を言えば、昭和初期に策定された沖縄振興計画も踏まえながら新規事業として芽だしさせることも可能である。
(小橋川順市、琉球藍製造技術保存会顧問)