<南風>この時代の経営


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 先日、創業20周年を迎えるIT企業の(株)スピアの創立記念事業にお招きいただいた。会場に着くと記念イベントとして、全社員が数チームに分かれ、難聴者向けアプリや農作業軽減システムなど、日常の不便を解決する事業提案を行っているところだった。プレゼンテーションはニーズを的確に捉え、ビジネスモデルと数値計画が盛り込まれ、どれも高いレベルだった。しかしそれ以上に、試行錯誤しながらも全員で協力して作り上げた形跡が随所に表れていたことに、心から感動した。社長はその中のいくつかをブラッシュアップして新事業として展開したいと目を輝かせていた。

 東京オリンピックやインバウンド増加で景気は好調というが、中小企業においては「その通り!」とはやや言い難い。帝国データバンクによると起業後、10年で約3割、20年後には約5割の企業が(データベースより)退出しているとあり、スタッフ100名を抱え成長し続けるスピアのような企業はおそらく半数以下であろう。さらに、東京商工リサーチでは2016年、調査開始以来、休廃業・解散の事業所数が最多を記録した。海外取引が身近になって競争が増し、IT技術と少子化が猛スピードで進む現代において、経営者の責務はさらに重く、もっと早く先を読まなければならなくなった。

 私は、成長する企業には共通する原動力があるように感じる。力の大部分は働く人たちの中にある。企業理念のもとに、本気で明日を作ろうと社員が団結できているか。社員たちが長所を活(い)かしあい、できないところを補い合いながら自ら考えて動いているか。今一度自分の会社を点検したい。一人ひとりが働き甲斐(がい)を感じる現場にこそ、企業成長に必要な革新的アイディアは宿る。現場の力を最大限に引き出す挑戦こそが、今の時代の経営なのだ。
(石原地江、有限会社アンテナ代表取締役)