<南風>自分の悩み、明かせますか


社会
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 先日、ある学生から、面談をしたいという依頼があった。2年生のこの時期は、実習を控え、特に相談事も多くなる時期である。

 彼の相談内容は、自分のコミュニケーション能力の乏しさ、口下手なところ、対人関係が苦手なところについて、クラスメイトから意見をもらいたい。だから場を設けてほしいとの提案であった。自分の悩み、弱みをクラス全体で話し合いたい!? 彼の提案に、はじめは心配だったが、彼と他の学生を信じ、空きコマの1コマをその時間にあてた。

 自分から発言することが少ない彼からの話にクラスメイトは戸惑っているようにも見えた。でも、真剣に、誠実に自分のことを語る彼の姿を見て、クラスメイトも彼の話に耳を傾け、誠実に応えた。

 口下手をどうにか克服したい彼に対して「発言してくれることは期待していない」「一緒に居るだけで楽しい」「あまり発言はしないからこそ、何か発した時重みがあって、うらやましい」。そっけない態度に対しては「嫌われていると思ってたから、そうでないと分かって安心した」「自分の悩みを皆に打ち明けられるってすごい」などと語った。中には「自分の悩みを具体的に話し、こんな時間を作ってくれて感謝」との声もあり、皆の思いが詰まった濃い90分になった。

 言語聴覚学科は、心理学系や発達系の科目が多く、職業に直結したカリキュラムであるために、青年期の特性が学生にとって苦しいものになることが多い。

 今回の彼の行動は他の学生にも大きな影響を与えた。

 仕事に対して真剣に考え、自分の人生に対し誠実な学生の姿を見て、いい青年期の過ごし方をしているなと思った。自分の青年期を振り返ってみたが、大した青年期ではなかったな…。学生がうらやましく、たくましく思えた。将来の楽しみが増えた日だった。
(平良和、沖縄リハビリテーション福祉学院教員、言語聴覚士)