<南風>人がつくる風景


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 数十年ぶりに母校を訪ねた。「先輩たちから後輩へのメッセージ」と題した同窓会主催講座の講師となって。はじめは新しい校舎に戸惑っていたが、人懐っこくあっけらかんとした高校生たちと話していると、昔に戻ったような気分になった。アーティスト、消防士、医師、ライブラリアン、経営者、映画プロデューサー、政治家、会社員などと多種多様な職業の卒業生が、自ら選択し歩んだ人生について、各クラスへ赴き熱心に語った。終了後控室で、「生徒たちは我々の体験を通して、ワクワクする気持ちで将来を捉えることができただろうか」と口々に話す講師たちの姿に懐かしい校舎が重なって見えた。

 講座と言えば11月より約1カ月間、那覇市中心商店街で店主たちによる第1回那覇まちゼミが行われる。沖縄市や浦添市を含め全国でも300カ所以上で展開されるプログラムである。

 時代と共に変貌する那覇のマチグヮー。現在は国内、アジア、欧米の観光客でにぎわっている。地元客はもちろん、多様な客層を迎え入れる那覇の商店街は、まるで自然発生したテーマパークだ。琉球料理をアレンジするカフェ、伝統工芸をベースにオリジナル商品を出す宝石店やTシャツ雑貨の店、本格和食器やカーテンの相対売りをする専門店など、新旧混じり合う中に個性が光る。そんな専門店の人から「得することを習っちゃおう」というのがまちゼミである(那覇市以外の方でも参加できる無料講座。チラシは那覇市役所、公民館などで)。

 昔は、デートや友達同士で遊びに行く、あるいは盆正月の買い物は決まって那覇のマチグヮーだったという方も多い。久しぶりに那覇のマチグヮーで、エネルギッシュな店主たちが醸し出す新しい風景を眺めながら、変わらない相対売りの懐かしいやり取りをBGMに街を歩くのも悪くないかも。
(石原地江、有限会社アンテナ代表取締役)