<南風>磨いて光る宝物


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 我が島沖縄の言葉、うちなーぐちは愛が込もった素敵な宝物だ。ふとした瞬間に島の言葉が出るのは愛嬌(あいきょう)で、スーパーのレジ打ちの綺麗なお姉さんが袋詰めをしながら「アガッ」と発したのも、なんとも微笑(ほほえ)ましかった。

 幼い頃から三線教室に通っていたからだと思うが、私は島言葉にとても興味があった。民謡の唄は、まるで理解不能だったが、学び進めていく中で暗号が解けていくような爽快感を楽しんでいた。

 周りの大人達にうちなーぐちで話してくれとせがんだ。そうしていくうちに、両親の内緒話(うちなーぐち)の内容まで理解できるようになった。内容は今となっては思い出せないが、話を理解できると伝えた時の両親の驚いた顔は覚えている。

 うちなーぐちの中でも、相手を思いやる心が見える言葉が好きだ。転んだりびっくりすると魂が落ちる。そんな時大人達は地面と私の胸に交互に手をあてて「まぶやーまぶやーうーてぃくーよー」とおまじないをかけてくれた。不思議と痛みも和らぎ、心が落ち着いて我に返る感覚があった。しかしまぁ魂というのは、くしゃみをしても落ちるし、よく体からコロコロと抜け出てしまうんだなぁとも思ったが、同時に愛されている実感もあった。

 くしゃみをした人に「くすけー」と言葉をかけてあげるのは、私も習慣になっているが、英語やスペイン語にも、それに値する言葉があり、神のご加護をという意味があるそうだ。思いやりの心は世界共通なのだろう。

 どうせ子供達は理解できないはずだから方言では話さない。そんな環境になってしまっていないだろうか? 子供は知る喜びで好奇心を駆り立てられると思う。積極的にうちなーぐちで接してほしいと願う。宝物は磨いてこそ光る。
(上間綾乃、歌手)